もったいない。

図書館で、「ピエール瀧の23区23時」という古い本を借りた。

ピエール瀧が逮捕されたからだろう、どういうつもり?と言わんばかりの顔の図書館の係員の何とも言えない視線を感じながらも、しれっと受け取った。わたしが別に犯罪を犯したわけでもないし。

ピエール瀧のコカイン使用事件については、あまり大した意見はない。ちょっとおバカでちょっと悪くてちょっとお調子のいいちょっと駄目な人、でもそこがいい、というゆるくてぬるくていい感じの人だったし、アナ雪のオラフの吹き替えもうまかったし、もったいないと思う。こんなに成功した人でも、あるいはそうだからなのか、クスリでもやらないとやっていけないほど人生は退屈でつらいことばかりなんだろうか?クスリでもやってなきゃいられないのかな。違法ではなくても酒やたばこ、甘いもの、コーヒーなどに頼っている人もいるし、そんなことは一切ないという人は、自分の機嫌で人を怒鳴りつけたり意地悪をしたりして気分良くなっていることもあるので、人って罪深いわ・・・としみじみ思う。自分の機嫌で嫌がらせをしてきたりする人より、ひっそりドラッグをやってくれている方がわたし的にはマシなんだけど、違法のものに手を出せば捕まるのである。意地悪はバレにくいし、正当化しやすいから立件できないしな。

件の本は、ピエール瀧が2010年~2012年にかけて東京23区を1区ずつ散歩し、写真を撮り、だらだらとした会話をまとめたものだ。ざーっと見て、まあ、別に面白くもおかしくもないが、このゆるさ、どうでもよさ、意味の無さがピエール瀧の良さだったような気がするので、つくづくもったいないと思う。

自分が住んでいる区の近くの時はやっぱり興味深く読んでみたが、まあ、なんというほどのことでもないことばかりで、取り立てて面白くもなんともない。わたしはピエール瀧がドラマや映画に出ているのは好きだけど、彼自身に何の興味もないのだなあとよくわかった。

今、ピエール瀧が過去に出演していた作品や、これから公開される作品の公開の是非について論争が起こっているようだが、わたしからするとどーでもいいと思う。個々に好きにすればいいと思う。うちの映画は瀧が出ているからお蔵入りにする、うちは普通に放送する、各々が判断すればいい。人殺しやレイプのようなものと薬物は違うと線を引きたがる人もいるが、そこの線引きは意味不明。映画やドラマではその役をやっているので本人の素行や素の性格は関係ないともいえる。映画の中で人を殺しても現実社会で逮捕されるわけはないのだったら、実社会で逮捕されてもドラマの中は別といってもよかろう。社会的制裁はそのあと、誰も使わないということで実現できるので、作ってしまったものについては気にしなくていいと思わないでもない。

ドラッグをやっているときにいい演技をしたとしてもそれはドーピングだから、そんなものを見たくないという人もいるけど、それもわたしはどうでもいい。ドーピングでも何でもよければいいし、素面でも出来の悪いものは見たくない。お酒飲んで勢いをつけて舞台に臨む人もいれば、タバコ吸って集中して台本を書いたという人もいるわけで、それとこれの違いの差は違法か合法かの違いであって、ドーピングとしては同じだろうと、個人的には思う。

20代の頃から使っていて、途中やめていた時期もあって、30年近くドラッグをしていても元気そうだし、真面目に仕事をしていたみたいなので、ドラッグの何がそんなに悪いんだろうなあなんて思ってしまう。金額が高い、暴力団やギャングの資金源になるからよくない、依存状態になって体がボロボロになると言われているが、だったらアルコールも違法薬物になるべきで、アルコールは許されているのは謎だ。お金がかかる、素行が悪くなる、依存状態になって脳までボロボロになる、胃や肝臓などにダメージを与える、飲んで暴れたり家庭内暴力の原因になる、そんな諸症状は有名だが、ただ成人になったというだけでみんな飲み放題だ。

別にピエール瀧をかばう気はないけど、叩く気もない。不倫もそうだけど、大人になったら個人の判断で、罪を犯すも犯さないも好きにすればいい。誰も止めることはできない。ダメだよという啓蒙はできても強制力はない。大人は違法・不法行為であることをわかっている上でやるのだから、あとは自己責任でどうぞ。

それはともかくとして、本の方はぬるーい本であった。金出して買うのはお断りだなあ。真面目に全編読む気にもならない。そんなピエール瀧らしい一冊。