自慢されてもね。

イエベ、ブルベという言葉がある。自分の肌が、イエローベースかブルーベースかという区別で、大別するとこの二つに分けられるというのだけど、そこに科学的根拠はほぼないと思われる。そもそも二つに分ける論理的な理由もなければ、なぜ二つで、三つ、四つあるいは五つではないのかの説明もない。女性ファッション誌でメイクの際に、自分がどの肌色かわかっていれば似合う口紅やアイシャドウの色が決まると、洋服選びの際にも参考になりおしゃれになれると、より素敵になるということで、あなたはどっちでしょうかと言われるが、基本的に日本で出版されている日本語表記の女性ファッション誌の主たる読者は黄色人種である。黄色人種ならイエローベースじゃ?とわたしは思っていたが、そうでもないらしい。

簡単なチャートでイエス、ノーで答えていくと自分がどっちかわかるというものもあるし、カラーコーディネーターにお願いして調べてもらうことも可能らしいが、答えが変わることもあるらしく、ということは、パッと見てあんたはイエベ、ブルべ、と言えるほど単純でもないらしい。

ブルーベースの方が色白なイメージがあるそうで、「あたしってブルべ」と自慢げに言い、友達がイエベだと露骨にバカにするやつもいるとかいないとか、なんとも平和なお話。タンザニアで飛行機墜落し全員死亡、モザンビーク付近で発生したサイクロンにより多くの人々がけがをしたり亡くなったりしているときに、「あたしはブルべ」と自慢しているのだから。価値観の違いというか、ブルべに価値を持っていない人間からすると、なんでそれが自慢なんだろう?といったところ。

いや、平和なのは何よりなのだけど、この手のクソ自慢というのは昔からある。わたしが若いころは、「あたしって低血圧だから朝起きられない~」というけだるいか弱い女自慢が多かった。単なる夜更かしで朝起きられないだらしがない女でも、こぞって「朝、ダメなの」自慢。年寄りは朝早起きという話からも、自分は若いからという自慢があるのだろうけど、なぜ低血圧が自慢なのか意味不明であった。わたしは上が90無いほどの低血圧であったが(実は若い女性は低血圧が多いので、それは普通のことで自慢できるほどのことではない)、朝は普通に起きられた。自慢したこともないし、自分が低血圧だとあえて言うこともなかった。でも黙っていると、「あんたってどうせ血圧高いんでしょう。ぎゃはははは、ババアだよ、それ!」とバカにしてくるので、なんだかなあと思っていた。頭の悪い奴の思考回路には恐れ入る。

そして、猫舌ならぬ猫手自慢。猫手というのはわたしとその友人の造語だが、熱いものが飲めない食べられない猫舌の、手バージョンである。熱いお茶などが入った湯飲み茶碗を「熱くてもてない~いや~ん、むり~」と言って熱いものが持てない猫手を自慢する若い女、はいて捨てるほどいた。わたしも熱い湯飲み茶碗は持てないが、マグカップに入れれば取っ手を持つので、実際問題になることは少ない。紙コップに入っていて熱くて飲めないなら飲まないで置いておけばそのうち冷めるし。熱くて持てなくて人に訴えないといけないほど困ることは今まで生きていて経験がないので、自慢する人には恐れ入った。熱いなら置いておく。しばらくすると冷める。持てる。問題解決。

二重瞼自慢というのもあったが、今は手軽に整形できるから希少価値が下がったのか、整形では変えられない肌の色のベースの部分を自慢に持っていくのだろう。実際は、イエベでもブルべでも色白さんはいるし、色黒さんもいる。ブルべだから色白で自慢というのは根拠なし。そして色白だと自慢というのも意味不明。昔、「あたしって色白なの。色白でよかったぁ。色黒の子ってかわいそうねえ~」と威張っていた人がいたが、その人は確かに色白ではあったが、肌がガサガサに荒れているし、びっくりするほど毛深くて、どちらかと言わなくても汚い肌の人だったので、「お前の場合は白いとか黒いとかじゃなくて、汚い。なんもうらやましくない」と思っていた。わたしは色白と自慢するほどでもないが、色黒でもない。毛深くなくてつるんとしていたので、若いころはゆで卵みたいだと言われたこともあったが、それをわざわざ自慢して言いふらすことなんかしなかった。どうせお世辞だと思って本気にしていなかったのもあるし。そして、人は自慢されると粗を探したくなるので、余計なことを自分からは言わないようにしていた。

色白論争は怖いので黙っていると、たまに頭のおかしい奴が、上記のように攻撃を仕掛けてくる。めんどくさいから相手の言うことを肯定すれば、長期にわたって、「あんたって色黒でしょ?かわいそうだね、あたしは色白だから~」とか、「高血圧のババア。ダサ―」と言われ続けることになる。仕方なく、「いや、血圧は低い方だけど、朝は普通にられるよ」と本当のことを言うと、「嘘つき!低血圧は朝起きられないに決まっている!ぎゃーぎゃー!!」と発狂するのである。「色白って言うのはわからないけど、黒くもないけどねえ」と言っても気に入らないと怒鳴られるし。一体どうしろと。てか、わたしが黒くても白くても、高血圧でも低血圧でも、その人には一切関係しないので、どうでもいいと思うんだけど。この世に色白は100人しか認められなくて、自分かわたしのどちらかがその最後の100人目認定決定戦!というなら必死なのもわかるけど(いや、だとしたらわたしはその人に譲るけど)、そんなこともないのでどうでもいいと思うんだけどなあ。喧嘩売るようなことではないと思うんだけど。

人は自分と誰かを比較して優劣をつけて、自分の方が優れていると思いたくてたまらない生き物なのか、必死で優劣をつける。なぜそれが優なのか、劣なのか、さっぱりわからないこともいっぱいあるし、それは単なるお前の好みだろうということでも必死で言い張る。とにかく分類して、自分が優れている、自分が気に入る答えになるように必死になる。ご苦労なことだと思うけど、巻き込まないでほしい。興味ないので。色黒だろうと色白だろうと、どうでもいいよ。

イエベ、ブルべと騒いでいるけど、どうせブスべ。