レンタネコ

少し古い映画だけど、ライムスターの宇多丸さんも酷評していたので見てみたいと思っていた「レンタネコ」を見た。最初の数分でギブアップして見るのをやめた。退屈な話とはまた別の、しょうもなさ感が漂っていたというか、いや違う、先入観なんだろう。あーこの映画しょうもないらしいよねという先入観。ダメだわたし!と奮い立たせて続きを見た。最後まで見て、結局、あーあ・・・と言う感じであった。

市川実日子ちゃんはブスかわいい女優ナンバーワンで好きだけど、こういう得体のしれないまっとうじゃない職業のふらふらした女性の役にぴったりだけど、市川実日子の無駄使いだと思う。最初のおばあちゃん草村礼子さんもとっても素敵で、すごく良いんだけど、なんかとってつけたようなお話が痛い。草村さん、すぐ死んで、いけ好かない息子がイライラして電話してくるって、もう、何百回見たんだろう。優しくて素敵なおばあちゃまだったのに、息子が感じ悪いっていうのが、もう。もったいない。真島さんの無駄遣いだよ!!

市川実日子ちゃんんが実は株の売買と占いで稼いでいるという設定も、コメディタッチにわざとしているんだろうけど笑えないうえに、ダサい。この昭和初期の少女漫画のコメディシーンのような時代遅れ感はなんだろう。どういうおつもりだろう。猫を炎天下に連れて歩いて非常識!虐待!というのはちょっとマジに取り過ぎじゃない?と思うし、猫をそのまま抱っこして帰るのも無理だけど、まあそこは映画ってことで許してやってくれと思うけど、でもそういう「まあ、まあ、映画ですから、目をつぶってくださいよ」ということもあっていいとは思うけど、だけど、「全編、目をつぶらないといけないことだらけ」というのはダメだと思う。奥さんが猫アレルギーという設定はだめでしょう。我慢しろって、殺す気か?って話ですよ。猫嫌いなの!というのは一緒に暮らすうちにねこ嫌いじゃなくなることはあっても、アレルギーはそういうことではないので。もっとも、単に好き嫌いとか自分の都合で「自分はアレルギーがあって」とウソをつく人はいるので、どこまでこの映画の中の嫁というのが本当にアレルギーなのかわからないけれども。でも、そういう「まあ許してよ」というのは1個2個にしておいてもらわないと、あれもこれも「映画だから許してよ」と言われたら、もうお話は成立しなくなる。たとえ作り話でも、その世界の中で整合性が取れていないとだめでしょう。

出てくる猫は可愛いし、市川実日子ちゃんも可愛いし、でも話はスッカスカで、しょーもなーい。まったく面白くない。レンタカー屋のエピソードも、何にも考えずに適当なことしやがってという設定で、あきれるし。レンタカー屋で12年働いて一人で任されているなんて立派ですごいことなのに、ディスっていいのかよ。ニューヨークで流行っている素敵なドーナツ屋ってランク付けしておいて、「出身大学やオッパイのでかさで人をランク付けするなんて!」という話をしたりして、哲学がないっていうと大げさだけど、お前の伝えたいものとか、お前の言いたいことって何なんだよ!ってぶれすぎていて気持ち悪い。ドーナツの食べ方も「へん!」とか「そんなことしていいことあるの?」というセリフは、この映画の主人公が一番言っちゃいけないセリフというか、一番言わないセリフじゃなかろうかという矛盾があり、世界観がブレブレ。おまけに、「もうランク付けはやめましょう」と言いながら、「わたしたちはCランクなんだから」というのだから、ずこー!!である。ランク付け、やめたんじゃないのかーい!!そしてさらに、レンタカー屋の姉ちゃんが自社のくじを引いて当てるというのも、実社会じゃありえないのでそういうところも詰めが甘いというか、適当すぎる。時折はさむ猫だけの映像は、猫好きに「いや~ん、可愛い~~」と言わせんがために入れていてわざとらしい。「生活に困っている風にやや見える」というやり取りも3回も繰り返されてめんどくさいし、面白くないし、鬱陶しい。誰もそこ、突っ込まないよ、映画なんだから。猫がこの株を買いにしたら、その場でいきなり急上昇するわけないからな。株価を何だと思ってんだ。

まったく関係ない話だけど、猫のえさの、ドライタイプのものを、なぜ「カリカリ」と言うのだろう?わたしが子供の頃猫を飼っていた時、やっぱりあのドライタイプのものを「カリカリ」と呼んでいた。誰かが猫を飼っていてそう言っていたのを真似たというよりも、猫が食べるとカリカリ言うので、自然発生的に「猫のカリカリ」と呼んでいた。オカンも「カリカリでええか」とか言っていた。なんでだろう。不思議!市川実日子ちゃんも映画の中で「カリカリ」と言っていた。電子レンジを誰が言い出したか「チンして~」というのと同じように、誰かが言ったのだけど、誰もが言ってしまう、日本語の語感に響く音であり、言葉なのかもしれない。あ、本当に関係ない話になってしまった。

話を映画に戻すと、市川実日子ちゃんが掲げる「今年こそ結婚したい」とか「選択の余地はない」「顔で選ぶな」みたいな標語もサムい。あんなキャラの子が結婚結婚って言うかな?なんかしっくりこないんだけど、という納得のいかなさでモヤモヤするし、人の描き方がありきたりで、ぺらっぺらすぎる。女はオッパイがでかくなりたい、結婚したい、男が欲しい。中年のオッサンは家族から疎んじられていて臭い、ババアはいつまでも子供に執着していて昔とおんなじことをする、みたいな。描き方がぺらっぺらすぎる。そして、隣の変なおばさん小林克也がちゃちゃを入れてくるところとか、何のつもりなんだろう。面白いつもりなんだろうか?オッパイがAカップとか男にもてないとかって話、まったく面白くないし、センスない。同じセクハラ発言でもうまく言うと面白いし、作品になるんだよ。「松之丞カレンの反省だ!」という番組で、松之丞はトレーニングジムでトレーナーの女性にセクハラしまくっていた。だけどそれがおかしくて、「ゆりはどうなの?」というセリフが、もう作品になっていたよ。ダメなんだよ、女性に年齢をいちいち聞いたり、カレシいるのとか、下の名前で呼んだり、そういうのって今どきダメだよ。でも、作品になっていたんだよ。ダメなことなんだけど、うますぎて。なんかもう、見ているこっちも笑うしかない作品になっていた。そういう「うまい!」がない。しょうもない映画でも、映像やセリフ、音楽などがピタッとハマって「うまい!」となると、自分にとっては素晴らしい作品となる。ああ、いいな、あれはいい、と愛おしくなってしまう。他はダメでも、全体としてはしょうもない映画でも、みんながバカにしても、自分にとっては素晴らしい作品となる。そういうものが、この「レンタネコ」にあればいいのだけど、ない。というか、わたしには見つけられなかった。猫もたいして出てこないし、活躍しないし、猫を前面に押し出す映画にしなくてよかったんじゃない?「ねえ、猫を貸すって面白くない?なんかこのアイデア、よくない?てか、あたしってセンス良くない?」で適当に始めちゃった映画で、本当にセンスがいい人ならそれなりにうまい事仕上げて面白い話にするんだろうけど、ダメだったみたい。残念!

それでもネットの批評をささっと見たら、結構喜んでいる人もいたし、癒し映画ってわけのわからんことを言っている人も少なからずいたので、もうこれはざっくり、好みの問題なんでしょう。わたしは前評判を聞いてから見ているので、公平な立場では見ていないと思う。だからそこは申し訳ないと思うけど、おそらく前評判を聞いていなくても「センス悪い映画だな」とは思うと思う。市川実日子ちゃんの変なお洋服はセンスがいいと思うけど、ストーリー展開、セリフ、人物設定、そういうものに壊滅的にセンスがないと思う。最後の嘘つきのコソ泥ヨシザワの話を広げたほうがよかったんじゃないの?婆さんとかオッサンの話、なんか意味あったかな?レンタカーの姉ちゃんとも、ご近所さんとして仲良くなっただけでよかったんじゃないのかな?最後のちらっと出てくる中学生もいらないよね。かまってちゃんの中学生がちょっかい出してくるって、ありきたりすぎてダサいし、出すなら最後まで責任もって描いてやれよ。

というわけで、残念。でも最初から残念とわかっていて見たので、納得、かもしれない。