ハンニバル

BS12で「ハンニバル」が始まったので早速視聴。有名な映画「羊たちの沈黙」でアンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクター博士があまりにも強烈で、彼はアメリカ映画史に残るアイドル・サイコパスになってしまったが、彼が隔離される以前の精神科医だったときのお話が今回の「ハンニバル」。ホプキンスじゃないマッツ・ミケルセンというデンマークの俳優さんがハンニバル・レクターを演じ、原作では1978年頃のエピソードを現代のアメリカに置き換えている。印象的なのはその映像。美しく、切り取って絵画というか、飾っておく写真のようなキーンとした美しい画像がちりばめられている。でも血しぶき多め、気持ち悪いシーン盛りだくさん。

レクター博士が直接手を下しているシーンはなく、思わせぶりなところが余計に恐怖を誘う。肺(おそらく)を調理しているシーンがあったり、おそらくそれをおいしそうに食べているシーンもあるが、普通に食肉としての豚を調理して食べているシーンもある。どっち?あれは本当に大丈夫なの?と思わせるぞわぞわゾクゾク感もあってたまらない。

FBI捜査官というかプロファイラーというかコンサルタントとしてFBIの捜査に参加しているウィルの精神的な危うさを危惧したFBIから、何の因果かレクター博士を紹介されてしまう。協力している風で実は犯人を煽ったり、誘導したりする天才レクター博士にFBIもウィルも翻弄されるが・・・!というお話。単にレクター博士が一人勝ちというわけではないところも面白い。猟奇殺人のサイコパスの手口を真似てレクター博士がこっそり殺人を犯し、その人肉を食っても、それはウィルはお見通しだったりするのでやられっぱなしではない。今のところまだ誰もレクター博士を疑っていないが、そのうちだんだん、疑惑の目が向けられていくだろうと思うとわくわくもゾクゾクも止まらない。そして、ウィルの精神的な危うさ、感受性の強さがサイコパス達の異常さと共鳴しているような、同一化しているような怖さも秘めている。異常犯罪者たちにシンパシーを感じているのか、彼らの方がすり寄っているのか、なんとも不思議な関係性を匂わせる。

アンソニー・ホプキンスの不穏な空気も良かったが、マッツ・ミケルセンの得体のしれない信用ならない冷たい感じもなかなかよい。今更もうアンソニー・ホプキンスはレクター役をすることは不可能(本人の年齢が〉。そして、マッツもなかなかで、まったく似ても似つかない人だけどレクター博士を演じるのに問題はない。高級スーツを着込んでおしゃれなカトラリーで人肉を食うレクター博士の口元の笑みは恐怖を助長する。お金をバンバンかけてぎっちり作っているドラマはやっぱり面白い。細かい設定まで練り上げて、その人を作り上げているので画面上で齟齬がない。なんて絶賛しているけど、まだシーズン1の第1話と2話を見ただけなので、だんだんボロも粗も見えてくるかもしれないけどね。

とにかく簡単に人が殺され、首の頸動脈を掻っ切られて血しぶきが飛び、いきなりドタマを撃ち抜かれて血しぶきが飛び、あっちもこっちも血しぶきだらけ。こういうのがダメという人にはキツイ映像だけど、その気持ち悪さを我慢してでも見たくなるほどのゾクゾク感がある。第2話のキノコは圧巻だったし。まー気持ち悪い、まー趣味悪い、でもこの気持ち悪さ、すごい。

第1話の誘拐されて戻された女の子や、第2話の病院関係者に化けて女の子を誘拐するところなどは、今どきあっちこっちにカメラがあるし、病院関係者のロッカールームなんぞはカードキーなどがなければ入れないことも多いので、ちょっと犯人に都合がよすぎる展開だな、そんなに甘くねえぞ世の中は、ということがある。昔ならこっそり暗闇に紛れて女子供をさらうのはできただろうけど。そんなことを言っているとお話にならないのでしょうがないが、だいたい稀代の神出鬼没のサイコパスは、お話の中だから都合よく監視カメラをすり抜け、都合よく鍵を入手してひみつのドアを開け、都合よく殺し、都合よく逃げることができる。同僚いっぱいで知らない奴が紛れ込んだら「ん?」となるはずの警察関係者に、なぜか一切不審がられずに化けることができるのである。

今後の展開が楽しみだが、とにかく怖い。子供は見ちゃいけないよーと思うドラマである。数週間前まで洋画枠で放送されていた「The Tunnel」もクライムサスペンスでゾクゾクしたが、もっとグロくて気持ち悪くておぞましいのは「ハンニバル」。「The Tunnel」は最後まで面白かったが、最後に「え?結局、このお父さんがあっちこっちでセックスしまくったからってことだったの?そりゃないぜー」というオチだったので、2度と見る気にもなれなくなってしまった。あんな壮大な、移民問題とか、迷えるティーンとか、ジャーナリズムの傲慢さとウソとか、そういう思想的な何かは何だったんだよ!結局お父さんが据え膳食わぬは派で、ついついうっかりあっちこっちで女の人とセックスして、そのせいで嫉妬にかられた人から恨みを買うという話だったので、がっくりであった。そのせいで殺される息子ったら・・・。浮かばれないとはまさにこのこと。ぼさーっとしていて、特に色気たっぷりのイケイケジジイではないので女は油断するのか、あるいは優しいお父さんだからか、とにかくやりまくりジジイである。それが英仏の国境を挟んで大量殺人の始まりなのだから恐れ入る。思わせぶりすぎて面白かったのに、結論はそれだったとは。それにしても、嫁が寝取られたとしても、だ。無理やりレイプされて殺されたとかではなく、嫁も合意で乳繰り合っているのだから、恨むのはお門違い。大人のセックスは同意があれば当事者の問題。殺人を犯す理由にはなりはしない。なんか、しらけた。そんなことで移民やテロを巻き込んで殺人事件を次々起こすなんて、それは性病の一種か?と問い詰めたいね。

ハンニバル」も最後まで見たら、そりゃないぜ!ということかもしれないが、途中が楽しければいいじゃないのと思っているので、来週の放送が楽しみ。もうちょっと血しぶき少な目でお願いしたいのだけど。