気が滅入るけど見ちゃう

最近わたしが見る英国のドラマは暗いものが多く、面白いけど見ていてつらい。英国のドラマといえばAbsolutely FabulousとかMr.Bean(ドラマ?)とかおバカなドラマもあるはずなのに、わたしが見ている物はなぜか画面も暗く、話も暗いものが多い気がする。アガサ・クリスティーの「検察側の証人」を見たら、目をこらさないとわからないほど混沌と暗い、じめじめした汚い地下道をずっと歩かされているかのようなドラマで、冷え冷えとした気持ちになった。最後はリゾート地の明るい美しいシーンが一瞬あるが、だいたい薄暗いところでずっとジメジメ。お話も気が滅入るような物語だった。実は犯人は・・・ということより、弁護士の妻のセリフの方が悲惨であんまりなのである。殺す気はないただの言葉である、ただの音である弁護士の妻の告白は、ものすごく残酷なのである。もちろん、お話の中では冤罪で絞首刑になった人の方が哀れかもしれないが、いやいや、どうだか。共依存関係のような主人を失った今、残されたあの人に何があるというのだろう。そもそもお金持ちの身持ちの悪い女主人が自らまいた種って感じもするし。でも、なぜあの弁護士さんがあんなひどいことを言われないといけないのか。

原作も同じお話なのかしらん?クリスティーの小説や戯曲はドラマ化されるときに設定が大幅に変えられ、「そんな設定いらんわ!」というほどえげつないことが多々あるので、原作が気になるところである。そこで原作をのぞいてみたら、案の定、ものすごく書き換えられていて、草葉の陰でクリスティーが怒っているんじゃないかと思うほど。ドラマ化とはいえ、ここまでキャラ変及びオチ変していいのかなあ?クリスティーは死んでいるからいいやってことなのかしら?英国のクリスティ―原作ドラマって、プロットは使われ、クリスティーという名前も使われ、タイトルもそのまま使われるけど、まったく別の話じゃねえか!ということが多い。せめてオチは同じとか、犯人は同じにしておいてほしい。おまけにドラマ化されるとき、なぜか近親相姦とかレイプとか性的に変態で問題ありという設定にされるキャラも多くて、ある意味名誉棄損って言うか、そこまで人を貶めるのはやめろよーといいたくなることも多い。なんでそう変態を出したがるのか。英国じゃあ誰でも知っているクリスティーの小説、だからちょっと結末を変えないと、最後までドラマや映画を見てもらえない、ということなのかもしれない。けど、でも、あんまりだ!という改変が多いと感ずる。

クライムサスペンスの「Broadchurch」も、画面こそは美しい日差しがあれど、どいつもこいつも状態で、クソ人間とクソ人間のだまし合いである。ここまでろくでもない奴ばっかりとはな!と唾を吐きたくなるほど。見ていて気持ちが落ち込んでしまう。面白いけど、もうちょっと、見ている側に救いを与えてほしいところ。唯一もらえた救いは、主人公の二人の警察官とというか刑事が真面目で性的に奔放じゃないというところだけ。ハーディが常識的とは言い難いが、ちょっとエキセントリックでプンプンしているけど言うことはまともだし、あっちこっちですぐ女とやりまくるヤリチンバカでもなく品行方正。バディを嫌々組まされたエリーもとても常識的で優しくていい人。ちょっとブスなのもご愛敬で、わざとブスキャラにしているのだろうけど、そこに女優魂を見た!と思ったし。そして、大好きなドラマ「刑事モース」も暗い話ばかり。画面も暗いことが多く、建物の中は常にじめじめ感が漂う。上司は咳ばっかりしているしな!モースは撃たれたり刺されたり冤罪で刑務所入れられたりと厄払いが必要なほどだし、ねちねちと続いていた同僚からのいじめがなくなって少しは幸せになれるのかしら。失恋ばっかりしているし。ただ、こちらも、咳ばっかりしている上司は良い人で良き家庭人でもあり、鬱陶しいお説教パパでもあり、モースの能力を理解してくれるいい人。殴るのは悪人だけ。モースは失恋ばっかりしているけどヤリチン野郎ではなく、単に惚れっぽくて、単に成就しないで終わるだけ。真面目でコツコツ捜査をするし考えもするのでいい子。だけど画面は暗いし、いじめられるし、もうちょっといい思いをさせてやりたくなる。

SHERLOCKみたいな、パート3までは楽しく見ていたんですけどねえ、パート4は蛇足でしたが、という程度の気の滅入り方のドラマもある。それでもなんだかなんだ言って見てしまう英国ドラマ。すごい美人が出てきてお色気うっふんな感じがないところがいいとか、なんかちょっと貧乏くさいところがいいとか、いろんなことを言ってみるけど、実は島国根性の人間同士相通ずるものがあるんじゃないか、なんて適当なことを思っている。