ボブという名の猫

猫の映画をまた見た。こちらは実話を映画化したもので、最後の最後に本当のご本人さんがちらっと出てくる。映画の猫のボブは一応本物のボブが出ていることになっているのだけど、たまに顔が違う似た猫にすり替えられているので、どうやら影武者がいるらしい。疲れちゃうしね。丁度いいポーズをとれないときもあるしね。驚いて逃げて行方不明になり、数日後帰ってきたときのボブ、明らかに違う猫だったよ。

ミュージシャンを目指すも親の離婚やら何やらでドラッグに手を出してホームレスになった青年ジェームズが、ドラッグから立ち直ろうとする途中で出会った猫のボブに救われるというお話。実話を書籍化、そして映画化で、本は大ベストセラーになったらしい。なんと運のいい人だろうかと思うほど猫に愛され、運に愛された人である。こんなおめでたい話、あるのかよ~うらやまし~~!猫に懐かれるだけでもうれしいのに、おかげで職もゲット、名声もお金もゲットって、運がよすぎるってもんじゃないだろう。そして、このジェームズ役の人。小汚くてダメダメなひょろひょろな感じでこんな奴いるいる~と思わせておいて、本物のジェームズさんが登場して思う。やっぱ役者さん、ハンサム・・・。ジェームズ役の人、やっぱりカッコいい。かわいい顔をしていて、ホームレスでお風呂にずっと入っていないようなべたべたの髪をしていても、かわいい。ご本人登場で、やっぱり一般人の顔ってこの程度なのよね・・・と納得してしまった。申し訳ないが。ボブはご当人も死ぬほどかわいい。クリクリで黄緑色のきれいな、キャンディーのようにきれいな目をしている。猫ってなんでこんなにきれいな色の目をしているのかしら。あああ、もう、可愛すぎて卑怯だ。

お話は単純だけど、途中でつらいこともちゃんとあって、山あり谷あり、ボブと会ったらうまくいくこともあるけど、その分人に注目されて嫉妬されて意地悪されたり、運悪く罰を受ける羽目になったり、ドラッグを抜くためにちょっとは苦しい思いをしてみたりと、まあまあの試練はある。でもこれ以上試練があるとつらくて見ていられないし、これより軽い試練では白々しいし、まあまあいい感じの試練じゃね?という塩梅。実際、クスリを抜くというのはどういう感覚なんだろうか。あんな数日で済む話なのかしらといぶかしく思うし、調子よくいきすぎよね~とは思うけども。

「ボブという名の猫」で特に注目してしまったのは、時折ボブの目線でカメラワークがなされる点。ボブにはこういう風に見えてますというボブ目線が、不安定だけど、面白いと思った。ボブも主役だからね。ジェームズだけじゃないボブの目線の街も表現したい。ボブから見た人間たち、ボブから見たお庭、ボブの揺れる視線。ただ、映画にいい効果を与えていたかというと、あったか?という程度かと。カメラワークが揺れるのでちょっとめまいがしそうになるのよ、オバハンは。

知り合ったヴィーガンのガールフレンドとのねちねちエロシーンもなく、とても健全なお友達モードなので子供と一緒に見られる文科省推薦映画。お父さんとの関係性も、腹違いの妹との交流も、くどくなく、あっさりと、将来に期待が持てる程度で済ませているのも、必要以上にお涙頂戴にする気はないところがよかった。たまに出てくる人々の悪意とか意地悪とか傲慢とかが、「あるな、うん、そうそう。会社とか学校でもこういうの、ある!」と思わせてくれる。男の嫉妬のいやらしさも見せてくれるところとかも評価したい。「女って人の幸せを嫉妬して意地悪する」と男は言うけど、いや、男も同じことしてまっせ、と。こういうのを見ても男は男のことだと思わないで、「女ってさ~すぐ僻んで意地悪するんだよなあ。悪口を言いふらしてばっかりだし」というのである。あほが。

腐れ縁のジャンキー仲間のバズの死をきっかけに、本気でクスリを絶たないとヤバい!と思ったジェームズを支えてくれたのは、ボブという迷い猫。ボブのために更生したいと本気で思ったということは、人は、誰かのためなら頑張れるけど、自分のためだけにはなかなか頑張れないということか。ジェームズがお金に困りすぎてゴミをあさって食べるシーンも、落ちたサンドイッチのクズを道路から拾って食べるシーンもあって、その辺はそこそこ衝撃的。上手にリアルとファンタジーを描いていると思うけど、全体としてはファンタジーでふわふわした楽しい映画だった。実際はもっとエグかっただろうに。そしてやっぱり役者はハンサムということで、映画っていいわねえで終われる。実話だからみんな感動したのであって、これが作り話ならもうちょっと山場も必要、試練も必要、猫の超人的な能力も必要だっただろう。それぐらい、若干弱いお話であった。が、もしも本当に100%実話だとしたら、すごいわ、うらやましすぎてたまらんわ、という感じ。猫も大活躍してくれるし、意外に犬も活躍してくれる。もっとも、犬は悪役だけど。

でもお金出してみるほどでもないかなあというのが正直な感想。悪くない。猫かわいい。ジェームズ役の人かわいい。ま、そんなところ。