幸あれ。

わたしも結構な変人で頭のおかしい人だが、時々わたしのおかしさを超えてくる人がいて、なんかとっても嬉しくなる。まるでバラエティ番組のコントのように、それも出来の悪いコントのようなことをする人がいることに、震える。

前にいた会社に外注のオジサンがいた。仕事はできないが人は良い…かも知れないという人で、社長と仲良しだから仕事を回していただけで、そうじゃなければ関わりたくないポンコツオジサンだった。オジサンが急死して、別居中で離婚調停中(もしかしたら離婚は成立していたかもしれない)の妻が会社に挨拶にやってきて、オジサンの債権を回収しに来た。つまり、外注のオジサンの報酬を妻である自分に寄こせと言ってきたのである。それはまあ、妻であるならわからんでもないが、そのとき持ってきた菓子折りがすごかった。何故、その菓子折りを持って来るのか、わたしには全く理解ができなかったし、会社の同僚たちもみんな、社長も含めて、「あの妻、ヤバい!!」と口をそろえた。

和菓子なのだが、箱に「めでたい」と書かれた紅白の水引の鯛の形のお菓子だったのである。

和菓子屋に行ったなら最中とか羊羹とか、それっぽい落ち着いたお菓子もあるだろうに、なぜわざわざおめでたい時に使うお菓子を買うのか。しかも何故箱に紅白の水引がかけられているのか。お前の配偶者は突然死したんじゃないのか。何がそんなにめでたいのか。

そりゃ離婚調停中のオッサンが死んだら嬉しいかもしれないが、そこはそれ、一応大人としての振る舞いで、なんとなく悲しみが漂っているかのような態の方がよろしくないですかね?だから何度も言うけど、羊羹でよくね?手土産で笑いを取らなくてもいいと思うんだけど。

そんなわけで、すごい妻だったのね、あのオジサンも大変だったのねと、初めてあのオジサンに同情した。あれなら離婚もしたくなるわな、と。いくら憎しみあっての離婚でも、対外的にはそれっぽい振る舞いをするものだと思うのだが。家でオジサンの骨を踏んでもいいし、燃えないゴミに出してもいいけど、社会的にはあなたが恥をかくのよ?と思うんだけどね。でもちょっと天然なのか、堂々と「うちの人がもらえるお金があるはずだから、ください」と来ていたので、裏表のないイイ人かもしれないとも思える。

報酬というよりは請負契約に近く、完成品を地方自治体に提出して、自治体からOKが出てやっとその自治体から報酬がもらえるものなので、完成どころかちょっと話を聞きに行った程度で死んでいったオジサンに入るお金は一銭もなく、めでたいの鯛もむなしく妻は手ぶらで帰って行ったが、世の中にはいろんな人がいるもんだなといい勉強になった。そしてポンコツオジサンの冥福を祈る気になったので、まあ、結果オーライ?