そういうわたしも偏見の塊なんですけども。

5年ほど前の話だけど。

当時勤めていた外資系金融業を辞めて再就職のセミナーに通う羽目になった。30代後半から50代の人たち向けのセミナーで、一日拘束されて、グループディスカッションの様なものをさせられたり、面接のデモンストレーションなど、まともな社会人ではないわたしにとってはつらいことばっかりであった。

そこでびっくりしたことがあった。

20人ほどのセミナーの参加者は3、4人のグループに分けられて、「あなたはとある会社の中間管理職で、新しく一名雇い入れることになったので、面接をすることになりました」というような設定を渡された。「新しく雇う人には、コピー取りやファイリング、来客へのお茶出し等を担当させたい。どんな”女性”を雇いますか?経歴、学歴を含めてグループで話し合って決めてください」だったのである。

わたしはドタマに来た。

「女性?どういう意味?なぜ男性じゃダメなの?」

他の人たちは何の疑問もなくこういう女性にしたいとか、学歴よりも人柄~とか経歴より花柄~とかそんなしょうもないことを言っていたが、わたしは講師に噛みついた。

「おかしくないですか?なんで女性限定ですか?女はコピー取ったりお茶淹れたりしてりゃいいんだよ、こんなことは男はしたくないから女にやらせりゃいいって意味ですか?だったら男性を雇いますね。この仕事を担当してもらって、その仕事のやり方を観察します。その人の特性を考慮して、1年後、2年後、違う部署に異動させればいい。こういう仕事は大事な仕事だけど、一生の仕事にするようなものではないから、入社したら必ず担当することにして、男の人にもやってもらいます。コピー取りなんか女にやらせりゃいいと思っている男性が多いみたいなので、だったら見せてもらいましょうか、男性が、どれほど完璧にコピーを取り、ファイリングし、お茶を淹れるのかを!」と。

爺さんみたいな年齢の講師には、「今まで何十年もやってきて、そんなことを言ったのはあなたが初めてだ」と言われて、それにまたショックを受けた。

初めて??嘘でしょ。「なんで女なの?男にコピーは取らせないってこと?お茶くみは女の仕事って、昭和初期かよ!!」という声が上がらないって、どういうことよ?21世紀の東京の、丸の内の高層ビルで催されている某有名大企業が主催するセミナーで、誰もそこに異を唱えないって、マジか?日本人!お前ら大丈夫か?たしか、そこのあなた、超有名外資系製薬会社勤務だったっておっしゃってましたよね?そっちのあなた、アメリカで博士号取ったっておっしゃってましたよね?なのに、あなた方は、この話がおかしいと思わなかったの??それとも、「単なる設定の話なんだから。そういう設定なんだから、そこに噛みついてもしょうがないわよ」ってことなの?ええええ?じゃあ設定が、社長の愛人候補の乳がでかくて股のゆるそうな秘書を雇うというのでもOKでしたか?それでもそういう設定だからって許しますか?

というわけで、期せずしてとんだ暴れん坊将軍っぷりを披露してしまったのだけど、それがほんの5年前なんだから、そりゃいまだに「男勝り」を誉め言葉だと思って使うジジイがいても致し方なし。男に準ずることが誉め言葉だと思っているおめでたい奴に誉められて嬉しい奴がいるなら、紹介してくれ。小一時間説教かましたる。