教え魔

若い頃に付き合っていた人がゴルフが好きだったので、打ちっぱなしにつれていかれてやらされたことがあった。スポーツはあまり好きじゃない上にゴルフは特に眼中になかったので嫌々やっていたのだが、そんなカレシと一緒に来ているわたしにゴルフを教えてくれるオジサンがいた。

もう少しこうするといいよ、これはこうだよと教えてくれるのでありがたく拝聴していたが、今思うとなかなかの根性である。20代のお姉ちゃんとそのカレシがデートがてら来ている打ちっぱなしで、隣のブースから口を挟むオッサン。

教え魔、恐るべし。

当時は教え魔だーなどとは思わず、親切な変なオジサンぐらいの認識で、二人とも真面目に拝聴していたのだが、平成生まれの若者にそんな人情は通じないらしい。教え魔はうざいとかバカとか死ねとネットで叩かれるようである。わたしは今そのオジサンのような歳になったが、そもそも親切でもなければ優しくもないので、知らない人に教えてあげることなんてまずしない。教え魔は親切な人優しい人なのかもしれない。

若い子が多い会社にオバサンになってから転職したら、仕事を教えてもらえなかった。前のを見てその通り同じようにやってくださいと言われるだけで、それを探すのにまず時間がかかる。前とはパターンが少し違う場合、これはどうしたらいいのか途方に暮れる。会社のローカルルールを教えてもらっていないのでよくわからない。常識で考えろと言うことだろうけど、常識って会社によって違うしね・・・と思う。なんとかあれこれ試行錯誤をしてやったあと「それ、違います」と5秒で否定されると、「先に言ってくれればいいのに」と思わずにはいられない。でも違うと言われれば正解を教えてもらえるので、次回からはそのように対処すればいいので問題はない。教えるのには時間がかかるので自分の仕事が滞るのがイヤなのだろうけど、わたしの若い頃とは随分と違うんだなあと思った。かつては、古株さんががっつり仕事を一から「うちの会社じゃこうしているから、これはこうして。この伝票はこう、こっちはこう、あれとこれはそうじゃない。たまにイレギュラーが出るから出たら言って。その時教えるから」などと教えてくれた。あれはとても時間がかかるし面倒なことである。ありがたい時代だったのかもしれない。

そんな自分が先輩になったとき、後から入ってきた人には親切に教えるようにしている。相手からすると鬱陶しいと思うかもしれないけど、「これってたまに変なのが出るのよね。出たら教えて。その時、説明するね。変なのが出てこない限り説明もしづらいの」とまで、わたしは言ってしまう。「説明長くてうんざり?ウザい?もっとあっさりした方がいい?」と聞くと、そうでもないらしい。教えてくれるならありがたいらしい。ま、本当のことなんて言えないだろうけどさ。教え魔のウザいババアとか思われてるのかもなと思いつつ、拒否されるまでは教える。

会社の仕事は順送りで、次の人に教えて伝えるものだと思っているし、調べるより聞いた方が早いもんね、会社によってやり方はちがうので一言教えてあげるのが筋だろうなどと、わたしはやっぱり教え魔の一派か。相手にとっては迷惑かもしれない?とか、自分の仕事が進まなくなってしんどいとかあるけど、かつて育ててもらった恩は次の世代に渡すものだろうとかって考えて教えてしまう。さじ加減が難しい。

ま、デート中のカップルには何も言わない方がいいと思いますけどね。