そんな日もある。

山崎まさよしさんのライブで揉めているTwitter(Xとは言わないのはわざと)が面白い。山崎まさよしさんが歌を歌わないから泣き出した観客がいたとか、帰るとか金返せと言った人がいたらしいけど、なんだろうなあ、こういう「金払った以上は、自分が満足いくような元を取りたがる人」って。

ライブって生き物だから、なんだか変な感じになっちゃったり、盛り上がらなかったり、面白くなかったりすることもあったりする。でも、それも込みで楽しむものなんじゃないの?

わたしは昔ティーンの頃、ロンドンのブリクストンアカデミーで行われたP.I.Lのライブに行ったことがある。P.I.Lは、かの有名なパンクバンドSexPistlesのボーカルが始めたバンド。その日、ボーカルのジョン・ライドンはご機嫌が悪く、「てめーらノリが悪いぞ!」みたいなことを叫んでいて、終始不機嫌そうで、たった2~3曲歌っただけでマイクをステージに叩きつけて引っ込んでしまった。観客は暴れて大騒ぎになったのだけど、あれはあれでジョン・ライドンらしいっちゃーらしくて、面白かった。数曲しか歌わないで勝手に怒って帰るって何なんだ!だけど、そんなレアケースに遭遇して愉快ですらあった。こんな風に何十年も経っても「あんなことあったなーあははは」と思い出して、でかいスピーカーに上って暴れているオーディエンスを、後ろから突飛ばして下に突き落としていたローディーの姿を鮮やかに思い出して、楽しい気持ちになれますけどねえ。数メートル落下していたけど、お元気かしら?あの頃は死んじゃったんじゃないかと心配したけど。

まさに「どういうこと?」とびっくりするような展開だったけど、過ぎてしまえば楽しい思い出。わたしなんて、日本からロンドンに行ったんだけど?(P.I.Lのライブを観に行ったわけじゃないけどね)でも金返せなんてことを、1ミリも思わなかったよ。お芝居だってミスが連発しておかしな感じになったり、ダダ滑りしているお笑いライブもあったりして、いろいろあるのよ(もちろん滅多にないけども)。それがまたライブの醍醐味なんじゃないかな。

山崎まさよしさんのファンであろうとなかろうと、そんなレアケースに遭遇したら、孫の代まで語り継げるネタができたと思えばいいのに。もしかしたら、あまりライブを見に行ったことがない人たちなのかもしれない。いまいちな感じになる時もある、めっちゃ盛り上がってうおおおおお~という空気に包まれることもある、いろいろあるのよねえというのを知らない人たちなのかな?と思うと、悪く言うのも申し訳ないかもしれないが、もっとライブにいろいろ行ってみて。国籍も人種も様々、そしてジャンルも音楽からお笑い、お芝居に伝統芸などなど。そうすると、いろいろあるねえ、こんな日もあったりするのよ人間だもの、という気持ちになれます。

お金取っているんだろう、プロだろうが!とブチ切れる気持ちもわからんではないが、プロだろうとベテランだろうと、やっている側もみんな人間だし。向こうはプロだからそういう展開は滅多にないんだよ。そんな滅多にないものを見られて得したと思わないなんて、不幸体質なんじゃないかと危惧する。

今でもジョン・ライドンがマイクをステージに叩きつけてすっこんでいったのを思い出して、「え?これって、そういうなんか、俺パンクだぜっていう演技?わざと?煽っているだけ?それともマジ?どっち?どっち?あれ?これでライブ終わり???」とびっくりした気持ちもよみがえり、騒ぎ出して暴徒化するパンクの兄ちゃんたちを観察し、やっぱり過ぎてしまえば良い思い出だわね~に着地する。山崎まさよしさんのライブに行った人も、早くそんな境地に行けるといいですね。

ただ、本当のファンならこういうのも有りだと思う、文句言うのはニワカ、みたいな論調は違うと思う。わたしも全然P.I.Lのファンじゃなかったし、ジョン・ライドンってあまり好きなキャラじゃないけどねーと思っていたし、まあブリクストンでやるならやっぱ行くか!と思っただけなので。ファンかどうかとか、古参がどうとかって話じゃなくて、「ライブは生き物。変なことが起きたりするけど、それはお宝」ということにして、楽しんだ方が人生お得だよってことよ。そんなレアケース、望んでも巡り合えないんだから、ある意味すごくいい日に当たったってことなんだから。

タイパとかコスパなんてしょうもないことを考えるなら、ライブなんか行っちゃだめ。あれはタイパもコスパも悪いっすよ。家でCD聴いてろ。サブスクでお値打ちに聴いてろ。ライブには行くな。あれはお金と時間がかかってしょうがないものだ。

こんなにいろいろ言ってみたけど、山崎まさよしさんのこと、顔と名前といつもなんか探している人だってこと以外、知らないんだけどね。で、山崎まさよしさんは、チケット払い戻ししてくれるっていうから、いい人じゃん。ジョン・ライドンは1ペンスも返してくれなかったよ。