笠間日動美術館に行ってきた!

笠間日動美術館という美術館が茨城県にある。15年以上前に偶然図書館で手にした画集でその美術館の存在を知ったが、東京から行くには微妙に遠い。遠いが日帰りで行ける距離。交通の便がすごく良いわけでもない。駅から観光用のルートバスに乗っていけるのだが、バスの本数も限られている。それでも重い腰を上げて笠間に行ってきた。

電車は友部駅で下車。美術館行きのルートバスの乗り場には、笠間焼陶器市へのバスも出ていた。笠間は焼き物で有名らしい。また、日本三大稲荷神社の笠間神社があるという。他の二つの稲荷はどこやねんと思いつつ(まあ、京都の伏見稲荷がトップだろうけど、他はどうかしらねえ。豊川稲荷?でも笠間が三大に入っているとはにわかには信じがたいところ)、一応いろいろ見るところはあるようだ。

笠間日動美術館は、日本に西洋美術のすばらしさを持ち込んだ画商長谷川徳七氏が買い集めた美術品を展示している。建物もおしゃれで、庭も素晴らしく美しい。それはもう、すんばらしい美術館であるが、場所が場所だからか、このゴールデンウィークに、この絵画鑑賞ブームの今、ガラガラに空いていた。見やすくて大変ありがたいが、人が来ないというのは死活問題。他人事ながら気になる。

わたしは貧乏人なのでひがんでいるのか、「えらそーに、ジジイめが!」と思って「わたしが惚れて買った絵」という画集を見たのだが、読後はいたく反省し、自分の品の悪さを恥じた。この人は確かに金持ちのボンボンとして生まれ、お金も地位もあるから絵画を買い付けにフランスに行ったりすることができたのだろうけど、その地位や財力やその他さまざまなものをちゃんと使い切って、この世に貢献しているのである。本当はすげーやなやつかもしれないが、そんなことどうでもいいのである。彼は自分の職務を全うしているすごい人なのだと、そしてそのセンスの良さにもしびれた。

わたしが徳七さんのセンスがいいとか悪いとかいうのはおこがましいというか、勘違いし過ぎだが、そういうことではなくて、あの時代に、この絵を日本に持ち込もうと思った先見の明とかセンスの新しさに驚いたという意味である。今の時代に、「あ、アンリ・ルソーね、わかるわかる」といくらでも言えるけど、あの時代にそれを決心できるほど「いいね!」を押せた徳七さんの斬新さとかおしゃれさが凄いのである。わたしが一番しびれたのは、道化師の踊りを描いた木炭画。地味で暗い絵だが素晴らしくいい。この絵はいい!と画集で一目見て恋に落ちた。ジョルジュ・スーラのその木炭画を、買おうと思うところが凄い。木炭で描かれた暗い絵で、道化師にありがちな悲しさやわびしさが漂い、およそ美して楽しい絵ではない。これを買おうと思うのはすごいな、と。わたしごときがすごいというのはいかがなものかと思いつつも、すごいとしかいいようがなかった。

そのスーラの木炭画の本物がある笠間日動美術館に行くのは長年の夢であった。この度夢がかなってうれしかった。本当に素晴らしく良い美術館で、もうちょっと交通の便が良かったらたまに行くのに。毎日祭りの日のようにわっしょわっしょい状態で人が群がる東京都美術館や西洋美術館を思うと、悔しいとすら思うほどひっそりとしていた。確かに西洋美術館所蔵の絵画の数々はすんばらしい!もう、毎日通ってもいいぐらい素晴らしいものがたくさんあって、ありすぎて疲れて脳が疲弊する。だけどこの美術館にも負けず劣らず素晴らしい作品がたくさんあるのに、なんでこんなにうらぶれているの~!!

中庭は傾斜のある広い広い土地に、周りは竹林で囲まれ、青いいい匂いが漂い、小雨にしっとり濡れた青いもみじも、これまた美しかった。こんな広大な土地で、美しい庭を抱き、おしゃれな建物の美術館は素晴らしいけど、やっぱり場所が問題?10連休とあってもひっそりとしていた。これが山手線の駅から徒歩10分なら、わんさか人が来るだろうに。わんさか人が来ない方が見ている方にはありがたいが、これじゃ経営が成り立たないのではないかとか心配になってしまう。それで館内でお昼ご飯を食べ、お土産物を買い、せっせと経済活動を行ってきた。

シンクロニシティ」と銘打って現代美術の企画展も開催されており、また玲ちゃんと軽々しく呼んでしまった鴨居玲氏のコレクション部屋もあって充実している。途中30分程度昼食休憩をしただけで4時間たっぷり楽しめた。2時間程度で見終わるかと思ったがとんでもない。もっといてもいいぐらいだが、観光用のバスが終わってしまうのでそうも長居はできなかったのが残念だった。

次は秋の紅葉か、あるいは雪が降った後か、などと考えてしまうほど素晴らしい美術館とその庭園であった。ああ、良い一日だった。