美術部良いとこ一度はおいで。

今週のお題「部活」

わたしは中高共に、大した部活をしていなかった。高校の時に美術部に入って油絵をやりたいと思ったのだが、油絵のニオイにやられて吐き気とめまいを起こしギブアップ。デッサンは楽しかったのだが、肝心の油絵になったらニオイに負けてしまった。そういえば、小学生の頃のプラモデル作りでギブアップしたのも塗料のニオイのせい。戦車を迷彩に塗っていてオエーオエー。自宅の自室でオエーオエー。そして高校になって油絵でオエーオエー。(溶剤のニオイがダメだった気がする)

ダサい。

デッサンの日は、みんなで舞台を作る。机を真ん中に集めてそこが舞台。そこにモデル(美術部員が順番でやる。着衣のままなのでヌードはないよ!)が座って適当にポーズを取ったり取らずにただぼーっと突っ立っているのもOK。周りを部員が取り囲み、場所の移動は原則不可。後ろ側でも斜めからでも、今いる場所から見たままデッサンすることを求められる。美術部顧問の先生が、「じゃあ5分デッサンだ。はじめ!」と号令一下、その場で5分でデッサンする。どこまで描けても描けなくても5分で終わりなので、「終了!」と言われたら終わり。モデルも交代。「じゃあ次は20分デッサンだな」と20分かけて描く場合もある。10分、15分、7分などといろいろ。どこまで描けたら正解とかうまい、ではない。デッサンだから。5分と言われたら5分でどの程度描けるか描くのか、自分でペース配分をしなければいけない。全体をつかまなければならないので、顔から描き始めて顔だけ描いていたら5分が終わっちゃたというのは、基本、ルール違反。最後に机の上に「最初のデッサンから見ていきましょう!」とみんなの絵を並べて先生が簡単な批評をしてくれる。本物の画家だったその先生は、バカにしてくさすようなことは絶対ないが、だからってなんでも褒めるわけでもない。「こういうところを注意して描くと、この人はもっとよくなるよ」とか、「面白いね、こんな風に見えているのか、そうか~」と感心しているのか小ばかにしているのか悩ましい感じのコメントをしてくれる。「この人のこのスカートの裾の描き方、いいね。プロには思いつかない発想だけど、いいわ、これ」と言ってもらったことがある。これは感心してくれたと解釈しておいた。こんな感じでデッサンの日は苦しくても楽しかったが、一番の目的の油絵の方がどうも相性が悪くてダメだった。

美術部で絵を描くのに先輩後輩はあまりない。先輩面している美術部の人は皆無であった。そりゃそうだろう。みんな勝手に自分の描きたいものを描いているだけだから。時々教えてもらったり、時々「こういう風に片付けるのよ」と指導されることはあっても、そこに暴力や暴言や強要はない。そんな感じで美術部はぬるく楽しかったが、だからといって夢中になるほどでもない微妙な部活動であった。先生が展覧会にかかりっきりになって部に顔を出さなくなるとデッサンはないので、一気につまらない。先生にたった一言だけど批評してもらえる瞬間はドキドキして楽しかった。誰が描いた絵かはわからない署名も何もない状態で先生は一言二言、コメントしてくれて(この絵はあの子のだなと絵の特徴でバレていただろうが)、それが怖くもあり、楽しくもあった。自分の絵を見てくれて、そして何か感じてくれるというのが嬉しかったんだろうな。

秋には、描きかけのわたしの油絵が、なぜか文化祭で美術部の作品として飾られていた。いや、それ、描きかけですけど!部長、なんで?「あー作品数が少ないから出しちゃった。でもなんか雰囲気あっていいじゃん」ということだったが、亡霊のようにぬぼーっとしていて、顔には表情もない人形の絵はホラーであった。油絵のニオイに負けて完成できなかったホラーな人形の絵が展示されていて、恥ずかしくて恥ずかしくて、夜中にこっそり絵を盗みにキャッツアイのようにレオタードを着るべきか悩むほどであった。結局、レオタードの方がもっと恥ずかしくて、文化祭の期間(2日間)飾られ続けたのであった。